平成27年度 たかしま・未来・円卓会議 たかしま森林資源活用プロジェクト⑤開催報告
2016年03月23日

平成27年度 たかしま・未来・円卓会義
たかしま森林資源活用プロジェクト⑤
先日、3月3日に以下の内容で、第5回勉強会を開催しました。
第1部 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター 木村 道徳 氏
■高島の森林・未来へのアプローチ①
第2部 総合地球環境学研究所 手代木 功基 氏
■高島の森林・未来へのアプローチ②
たかしま市民協働交流センターでは、平成25年度より、
さまざまな主体が協働で課題解決に取り組むまちづくりを目指し、
「たかしま・未来・円卓会議」を開催しています。
これまでの円卓会議の報告はこちら。
今年度は、【朽木地域】という地縁型の円卓会議と
この【森林資源活用】というテーマ型の二つに絞って、
円卓会議をすすめています。
今回は第5回として、これまでの勉強会を踏まえ、
滋賀県琵琶湖環境科学研究センターの木村氏、および
総合地球環境学研究所の手代木氏より
【高島の森林・未来へのアプローチ】と題して、研究者の視点から
このプロジェクトにどのように関わっていただいているのか、また
どのような関わりができるのかについて、紹介をしていただきました。

まずはじめに、滋賀県琵琶湖環境科学研究センターの木村 道徳さんに、
研究センターとしての関わりや木村さんの研究についての紹介と
これまで高島市内および滋賀県内で実施してきた薪材としての
森林資源活用の研究について、報告していただきました。
◆滋賀県琵琶湖環境科学研究センターについて
<目的>
琵琶湖環境科学研究センターは、琵琶湖とその流域を一体のものとしてとらえ、健全な水循環、物質循環、生態系の保全といった視点から琵琶湖と滋賀の環境に関する現象の解明、行政課題に取り組むため、幅広いネットワークの形成を図りながら、総合的に試験研究を推進することによって、滋賀をモデルとした持続可能な社会の構築に貢献する。(HPより抜粋)
森林面積は非常に広く(県土の1/2で琵琶湖面積の3倍!)、
滋賀県の人々の生活に大きく影響している!
◆木村氏の研究について
<研究テーマについて>
琵琶湖流域の研究を進める → 源流域の森林の研究は欠かせない
・生態系のなかでの森林のあり方ということで、土砂の流出などわかっていることはあるが、どうしたらいいのかまではわかっていない。そもそも社会として、森林のあり方を考えないといけない。
→環境計画、環境政策を専門としている木村氏が研究
<森林管理の問題>
・森林に価値がない→所有者の管理意識の低下
→木材としての森林活用だけでなく、観光や精神的な豊かさなど、社会の中での森林の活用を考える
・社会全体の流れで、エネルギー源としての木材利用が見直されている
→エネルギーとしての活用を一つの基準としてとらえ、研究
<エネルギー源としての木材利用について>
・百年前の課題→エネルギー源として「はげ山」になるほど、森林を活用していた。
→治山事業により、青々とした山に。
・現在の課題→木材の輸入やエネルギー革命により、森林が使われなくなった。
→「ほとんど利用しない」のではなく、「利用し尽くす」のでもない、その間を取るような利用が望まれる。
<山の上手な使い方を考える>
・地域社会として、森林をどう維持管理していくかということを考える必要がある。
・地域社会で森林がどのように使われているか、また森林に与える影響についても継続的に調査。
・地域の森林が、未来にどうあって欲しいのかという「森林ビジョン」を地域全体で共有する必要がある。
→地域社会ので森林情報の共有
・山間集落の過疎高齢化など、山への関心が薄れ、ふれ合いがない→地域社会の森林ビジョンがない。
→地域社会のおける森林へのまなざし育成
地域社会全体で森林に関する情報を共有しバランスを
取った使い方ができる社会的仕組みが必要
・森林の成長スピードを越えて、利用が進むと森は消滅する。
→森林と地域エネルギーの連関を考える場を作っていきたい。
その他、詳細は割愛しますが、
<高島市の利用可能な森林資源の検討>ということで、
次の3つの条件
(①植生が広葉樹 ②集落からの距離が100m以内 ③土地利用が建物用地)で、
薪材として伐採・活用ができる森林面積を試算したり、
<高島市内での薪ストーブ設置調査>ということで、
高島市内での薪ストーブの設置家庭の特把握と薪消費量(需要量)の推定の
結果を報告していただきました。
研究者という視点から、高島市の森林にどのような課題があり、
研究者としてどのようなことが地域に還元できるのかなどを
お話しいただきました。
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続いて、総合地球環境学研究所の手代木 功基さんに
高島の森林・未来へのアプローチ②
~高島市朽木における地域資源としてのトチノキ巨木林~
と題して、お話ししていただきました。
<トチノキの研究について>
・2010年くらいから、朽木でトチノキについて研究・調査を実施。
ここではこれまで行ってきた研究(共同研究)の報告として、以下の3つについて
お話していただきました。
①トチノキ巨木林の実態
②トチノミと野生動物
③トチノキと地域の関わりについて
・トチノキは日本全国広い範囲で確認され、特に沢筋に分布。
・縄文時代の遺跡から、トチノミを食べていたことが発見されている。
・山村の暮らしに密接に関わっている。
・淀川水系の最上流部の朽木は、地域面積の90%が森林。
・2010年より、トチノキの巨木伐採が確認され、保全活動が広がっている地域でもある。
・巨木と水源の郷をまもる会とも連携して、研究を行っている。
◆手代木氏の研究について
●巨木林がどういったところに分布しているのか。
●地域の人々の暮らしと巨木林がどう関わっているのか。
●トチモチがどのような経緯で特産品かしてきたのか。他地域とどういった違いがあるのか。
→現代における森林資源としてのトチモチの価値を再考。
→研究成果を地元に人に活用していただきたい。
<①トチノキ巨木林の実態について>
①トチノキ巨木林はどこにあるのか
・巨木以外のトチノキも含めた全体像を把握
→谷に育成する全てのトチノキ個体位置と胸高周囲長を計測
→胸高周囲長300cm以上を巨木とする
・巨木は谷の最上流部に多く分布
・小中径木は谷筋に全域的に分布
・谷底から近い場所には、小中径木が多い
・巨木は谷底から一定の高さ(10~25m程度)に出現
②巨木林の周辺環境はどうなっているのか
・植生調査、地形調査
→巨木林は、谷筋近くに分布。上部にはアカシデ、コナラ、ミズナラ(左)やミズメ、リョウブ、アスナロ(右)などの二次林の構成主が主体となっている。
→朽木の二次林は、主に薪炭林として利用されてきた。→炭焼き窯跡が17か所確認できた。
→巨木林は積極的な山林利用の中に存在
なぜ、このような傾向が見られるのか。
→巨木へと成長していく長い年月の中で、土石流や斜面崩壊の影響が最も少ない場所に、巨木林が残ってきたと考えられる。
→さらに、そこに人の利用や保護の意識が重層的に重なり合い、巨木林が成立
◆ポイント
朽木地域のトチノキ巨木林は、
人が積極的に利用してきた里山に残る文化的な遺産
<②トチノミと野生動物について>
・トチノミに関して聞き取り調査をすると、「シカ」に食べられているという声をよく聞く。
→本当にトチノミはシカに食べられているのか?
・トチノミには渋み成分や苦味成分が含まれており、食べられる動物は限られる。
・トチノミを食べる動物として知られているのは、ネズミ、リス。
・シカは食べることは知られているが、稀である。
→朽木において、何がトチノミを食べているのかを調査
→赤外線カメラで動画撮影
・トチノミの持ち去りに大きく寄与しているのは、ネズミである可能性が高い
・シカはトチノキ周辺を頻繁に訪問し、トチノミを食べていた!
・年によって傾向が異なる? →現在、さらにデータを蓄積中
<③トチノキと地域の関わりについて>
・トチノミがとれなくなった。
・地域の人々は、トチノミを入手するため苦闘。
→トチノキの下に爆音機設置、木の周辺にテープを張るなどするが、うまくいかず・・・
●栃餅づくりへの利用
・トチノミがとれない。→他地域で実を採取し、持ってきてくれる人が少しずつ増えた。
→トチノミの利用が可能に!→トチノミ利用のネットワーク
・日本の様々な地域でとれるトチノミがなぜ、特産品となるのか。
栃餅づくりの「技術」こそが特産品!
→灰によるあく抜きなど、簡単に出来ない技術を持った人が、比較的たくさんの残っている。
・全国に約1000か所ほど道の駅があり、電話でヒアリング調査を実施。
→そのうち、246施設でトチノミを利用した食品を販売している。
・朽木ならではの、他の地域にはない特徴とは?
→巨木伐採問題を契機とした保全団体の設立と様々なイベントの開始
→トチノキの存在や価値を理解する人々の増加
→他地域(綾部市古屋地区)との交流がはじまった!
一方で・・・
→外部の人々の協働が生まれているが、地元全体でトチノキ・トチノミに対する関心は、必ずしも成熟しない可能性も考えられる。
→地域全体に「トチノキ・トチノミと関わる文化」が残るような活動が重要
◆まとめ
・トチノキやトチノミを使ったトチモチなどは、朽木の自然環境に支えられ、地域の人々との関わりや地域外との関係の中で生き続けている「文化的な遺産」である。
・今後の対応次第では失われる可能性もある脆弱な資源
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勉強会をしていると、「知っているつもり」になっている団体や個人の、
全く知らなかった側面や、思いの強さのようなものを、その発言や態度、
また、言葉の端々で同時に感じることが出来ます。
みなさんの抱える仕事への熱意や想いのようなものと合わせて
課題をお聞きしていると、それは僕自身の課題のように思えてきます。
今回、報告して頂いた研究者のお二人は、仕事ではありますが
これだけ何度も何度も、この高島の地へ訪れてくれていることを考えると
その課題解決への意欲や、想いの強さを感じずにはいられません。
行政だけでは、また地域だけでは解決できない課題だからこそ、
より多くの人の知恵や力を総動員して、
解決に向かわなければいけないのだと思います。
そこに、協働や総働の意味があるだと思っています。
報告は、原田でした。
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