報告!朽木でずっと残していきたいもの 世代をつなぐ朽木の今昔写真 第3回「私が未来に残したい風景やもの、ことの写真」

2016年12月12日

 たかしま市民協働交流センターの坂下です。
 朽木住民福祉協議会と連携し、「朽木のみんなと円卓会議」を運営しています。
 「安心していつまでも朽木で暮せる」地域のために、地域の人々が何ができるのか、どんな将来の朽木地域を描くのか、子どもも大人もともに考え、話し合う場づくりをしています。

「朽木のみんなと円卓会議」の取り組みをご覧ください。

 7月から3回の予定で、さまざまな世代の人が朽木の昔を知り、今の朽木を確認し、これからの朽木について考える機会を、昔の写真や最近の写真など、写真を入り口にして取り組みました。
 9月19日(月・祝)に開催しました第3回「私が未来に残したい風景やもの、ことの写真」の報告を、総合地球環境学研究所(地球研)の熊澤さんからしていただきます。

 
 開催案内はこちらをご覧ください。


 こんにちは。
 京都は北区の上賀茂にある総合地球環境学研究所(地球研)の熊澤です。

 今年度の「朽木のみんなと円卓会議」は、朽木で、ずっと残していきたいものや伝えたいものについて、楽しみながら考える場を持ちたいと、古写真(昔の写真)を使ったワークショップ「世代をつなぐ 朽木の今昔写真」を企画しました。この場が、過去の朽木について理解を深めながら、今、そして未来について考えるきっかけとなること、また、古写真を介して、できれば世代間でのつながりを築けるようになることを目標として企画しました。

 今年度は、7月~9月に朽木のなかでも市場、野尻、荒川、岩瀬、宮前坊といった朽木市場に比較的近い地区の写真を用いて市場集会所で行う企画と、10月~12月に針畑地域の写真を用いて針畑で実施する企画の二つを行う計画です。

 ワークショップは以下の3回シリーズで構成されています。
第1回:「昔の写真を見て語ろう」
 ちょっと昔の朽木市場周辺の風景や人々、町の様子などの写真を見ながら、「朽木の何が変わって、何が残ったのか」を話し合います。

第2回:「今の風景を撮って昔の写真と比べてみよう」
 古写真に写っている場所を参加者が実際に訪ね、写真を撮り、風景や暮らしの中で、変わったもの、変わらないものなどについて話し合います。

第3回:「私が未来に残したい風景やもの、ことの写真」
 参加者に「私が未来に残したい風景やもの、ことの写真」を持ち寄ってもらい、この写真を手がかりに、「朽木でずっと残していきたいものとは何か?」を考えます。

 第1回で過去を知り、第2回で現在をとらえ直すことで、第3回で未来に向けて働きかけるというのが、この企画の全体像です。

 案内人は、地球研の気候適応史プロジェクトの研究員である鎌谷かおるさんです。
 鎌谷さんは、歴史学の研究者で、滋賀県高島市マキノ町知内をフィールドに、古文書や民俗資料を用いた歴史研究をしています。

 第3回目は、「未来に向けて働きかける」ことを目的に、12名の方に参加いただきました。

 まずは、第1回、第2回のふりかえりを20分程度、丁寧にしました。
 参加者には、「私が未来に残したい風景やもの、ことの写真」を持ってきてくださいとお願いしていたのですが、それぞれに思いが込もった写真を持ってこられました。参加者の写真に加え、「朽木のみんなと円卓会議」の研究者スタッフが持参した写真もプリントして模造紙に貼り付けました。研究者スタッフの持ってきた写真も入れたのは、「よそ者」の視点ですが、未来に残したい思いを入れたいを思いました。
それぞれの写真について説明を書き込んで行きました。
報告!朽木でずっと残していきたいもの 世代をつなぐ朽木の今昔写真 第3回「私が未来に残したい風景やもの、ことの写真」
一人ひとり、持ってきた写真について説明し、写真についての話で会場は盛り上がってきました。
報告!朽木でずっと残していきたいもの 世代をつなぐ朽木の今昔写真 第3回「私が未来に残したい風景やもの、ことの写真」

 次に、持ってきた写真の風景や祭り、ものなどについて、なぜその写真を選んだのかを未来の朽木で暮らす人に向けて語りかける、というワークを行いました。
 ワークでは、持ってきた写真にタイトルを付け、一人ひとりが未来の人に向けて語る内容を原稿に書き、みんなの前で未来の人へ語りかけました。

<ワークの内容>
「未来の朽木の人に向けて、この写真のよさについて説明してください」
(一人2分(厳守);終わったら皆で拍手しましょう)

<ワークのルール>
最初に、「何年後にどこどこでなになにをしている、○○さ~ん!!」と呼びかけてから始めましょう。
最後に、「写真のタイトル」を言ってください。

鎌谷さんが例を説明しています。
報告!朽木でずっと残していきたいもの 世代をつなぐ朽木の今昔写真 第3回「私が未来に残したい風景やもの、ことの写真」

しばらく、一人ひとりが原稿作りに集中し、順番に未来の人へ語りかけました。
報告!朽木でずっと残していきたいもの 世代をつなぐ朽木の今昔写真 第3回「私が未来に残したい風景やもの、ことの写真」

写真のタイトルの一覧です。
報告!朽木でずっと残していきたいもの 世代をつなぐ朽木の今昔写真 第3回「私が未来に残したい風景やもの、ことの写真」

【朽木地域の参加者の写真タイトル】
①平和な日本へ (特に指定なし)
②負けるもんか!(20年後)
③子供みこし(10年後)
④地域で子供たちを育てましょう(10年後)
⑤この場所に立ってごらん、昔の足音が聞こえてきます。(20年後)
⑥六斎念仏踊りをこれからも残していこう(20年後)
⑦おばあちゃんはえらかった(30年後)
⑧市場の盆踊りを盛りあげよう(20年後)
⑨地域の地域資源おこしは地域のもの使用しないと長続きしない(今~50・60年後)
⑩田園風景を残したい(20年後)
【研究者のタイトル】
⑪行けばなんとかなるところ(400年後)
⑫引きつがれていくもの(70年後)

 ①の方は、小さい頃のお母さんとおばさんを写した戦時中の写真を見せつつ、未来の世代も規律正しく、そして平和な日本であって欲しいとの願いを込められました。

 ②の方は、昭和28年に起こった水害の写真を取り上げ、水害後に毎年行われるようになった神事は継続していますか、と問いかけられました。

 ③の方は、「子どもが減って大人神輿になってませんか?」と問いつつ、子ども神輿を介した地域のふれあい重要さについて語りかけられました。

 ④の方は、妹の小さい頃が写っていた写真を見せつつ、地域で地域の子どもを育てて欲しいと語りました。

 ⑤の方が取り上げたのは、娘さんの写真。朽木東小学校の入学の際に小学校に向かう階段のところで撮影したもので、昔とのつながりを持てるかけがえのない場所として語られました。

 ⑥の方は、六斎念仏踊りが地域の若者に再び伝わり、朽木の中で継承していくことが可能になっているか、問いかけられていました。

 ⑦の方は、30年後の息子さんと娘さんに向けて語りかけ、その子たちのおばあちゃんが日々の暮らしの中でたくさんのことをきちんと行っていた様子を伝えていました。

 ⑧の方も20年後の子ども達世代に語りかけられました。市場盆踊りの練習の写真を見せつつ、自分たちで盆踊りのお祭りを作り上げることのよさが語られました。

 ⑨は、現在トチ餅作りに取り組んでいる最も若い担い手の方に向けたもの。個人名が出てきたときには、会場が笑いにつつまれました。「私の33回忌の法事では、必ずトチ餅を備えて下さいよ」とのこと。トチ餅づくりを続けてほしいという思いが込められました。

 ⑩は、欠席者からのメッセージを代読し、代読者がタイトルを作成しました。田園風景の黄金色の美しさの継続を願うとともに、そこにある農耕からのたくさんの学びが得られることが語られました。

 ⑪は、研究者にとって丸八百貨店は赴くことで次の展開への示唆が得られる場であると述べた語りでした。

 ⑫は、突然訪ねて行っても研究者を受け入れてくれる、2016年にあった朽木の方々の気質を紹介した上で、現在取り組んでいることが、後に続く研究者にどのように引き継がれているかをたずねたものでした。

 最初に模造紙に貼った写真を説明する段階で、すでにお互いに語り合いが盛り上がっていたので、「未来の人に語りましょう」といきなり提案しても、「話すことはない」ということになったらどうしようと思ったのですが、心配無用でした。みなさん、大きな声で未来の人へ、時には今の人へ、語りかけて下さいました。

 最後に、参加者が一人ずつ3回の取り組みをふりかえり、感想を語りました。さまざまな感想をいただけたのですが、未来の人への語りかけについていただいた「こんな風に地域のことをみんなの前で話せるということは二度とないかもしれません」という女性の感想は、今後の私たちの支えにしたいと思いました。こんな場所を提供していくことの大切さを感じました。

 アンケートでは、「これを機会に今だから写せる写真を撮るよう心がけようと思う」という感想も寄せていただきました。
 今後への要望としては、「同じ顔ぶれにならないように様々な人がかかわれるような工夫を」「今後、本日や前回の内容をどういった形で他の人と共有するのか説明があると良い」「地域の人たちにまず参加する楽しさを提供することを考えることが大切かな」といったものがありました。
 参加いただいた方の声に応えることを目標に、今回の古写真ワークショップで行ったこととわかったことについて、11月3日、朽木文化祭でご報告しました。ワークショップに参加された方も、古写真ワークショップってどんなの?と思われた方も、また参加してみたいと思っていただければ幸いです。

 最後になりましたが、ワークショップに参加してくださったみなさん、写真を貸し出してくださったみなさん、ありがとうございました。

第1回「昔の写真を見て語ろう」の報告はこちらをご覧ください。
第2回「今の写真を撮って昔の写真と比べてみよう」の報告はこちらをご覧ください。


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Posted by たかしま市民協働交流センター at 16:26 │たかしま・未来・円卓会議報告