たかしまの森へ行こう!
~びわ湖の漁師に聞く、湖と森のつながり~開催報告
話題提供/滋賀県漁業協同組合連合青年会 会長理事 中村清作氏
滋賀県農政水産部水産課 水産振興係副主幹
水産業普及指導員 三枝仁氏
協 力/安曇川三和漁業協同組合
日 時/2月4日(土)7:30~14:30(受付7:15 終了14:30)
場 所/安曇川三和漁港【高島市安曇川町四津川752-1】
安曇川世代交流センター【高島市安曇川町南船木249】
イベントの案内はこちら。
たかしま市民協働交流センターでは、平成25年度より、さまざまな主体が協働で課題解決に取り組むまちづくりを目指し、「たかしま・未来・円卓会議」を開催しています。
これまでのたかしま・未来・円卓会議(森へ行こう!PJ)の報告はこちら。
今回の「たかしまの森へ行こう!」第3回勉強会は、魞(えり)漁見学に乗船体験、獲れたての湖魚を使っての料理教室にびわ湖と漁業の勉強会と盛りだくさんの内容でした!
まずは三和漁港に集合!全員で漁師から乗船に関しての注意事項を聞きました。
ライフジャケットは船のシートベルトと一緒です!と、真剣に話される中村さん。皆さんも乗船の際は必ずライフジャケットを着用しましょう!
そして、
いざ乗船!
運転は講師の中村さんと、長浜から協力に駆けつけてくださった漁師、浦崎さんです。
乗船中は安全のために支えを持って、座っての乗船になります。
びわ湖の魞と魞漁の様子です。
魞漁は3人が同じペースで網を曳いていかないと、片方に寄れてしまい網が引けなくなってしまいます。
3人で息を合わせ、休む間もなく一気に引いていきます!
次に獲れた湖魚の選別です。たくさん取れても売りに出せるのは鮎がほとんどだそうです。
中村さんは
「どの魚もその魚に合った調理をすれば、おいしく食べられるんです」と話されました。
精一杯獲った魚がなかなか世間で認められない。買い手の業者さんも凄く協力してくれてるが、消費者に湖魚の美味しさがなかなか伝わらなくて悔しいと、話してくださいました。
今回は、そういった選別で売りに出せないと判断された魚を少しいただいて、湖魚の調理をしました!
すぐ近くの安曇川世代交流センターで、新鮮な湖魚を使い、料理教室スタートです!
まずは、獲れた魚の説明を、中村さんが丁寧に話してくださいました。どれも魚屋では見かけない魚ばかりです。
☟獲れた魚はこちらです☟
・ラージマウスバス(ブラックバス)
表面のぬめりが独特だが、そこを処理すれば美味しく食べられるそうです。
小骨もなく、鯛のようなぷりっとした食感。ちなみに「ブラックバス」とは和製英語で、実際の名は「
ラージマウスバス(大口バス)」というそうです。
・ウグイの稚魚
オレンジの線の入った大きな魚のイメージですが、びわ湖のウグイは銀色をしていてそこまで大きくないです。
鮮度がある状態なら刺身でも食べられるそうです。
・ビワヒガイ
明治天皇が好まれて食べていたことが理由で
「魚」に「皇」で「鰉(ヒガイ)」という漢字を当てられているとのこと。
今でも米原の魚屋さんが東京へ送っているそうです。
・ウツセミカジカ
焼いてお酒の中に入れて「骨酒」として出されることもあるくらい、
旨みがでる美味しい魚だそうです。
・ハス
ハスには、ハスゴ(ハスの子ども)、中バス、ハスとあって、その中で雄バス、雌バスと分かれているそうです。今回のハスは、ハスゴと中バス。
・カマツカ
びわ湖の底を泳いでいる魚で、口が下向きについています。
塩焼きすると美味しいそうです。
・ニゴイ
川で獲ると産卵期で卵に栄養をとられているため美味しくないそうですが、今回のように
沖で獲ると脂がのっていておいしいそうです。
・氷魚
今回は漁で獲れなかったので冷凍で用意しました!
釜揚げにして美味しくいただきます!
そして講師の三枝さんのもと、
「魚のさばき方講座」!
参加者皆さんが率先して全員で調理に取り掛かりました!
頼もしい!!
他にも揚げ物や塩焼き、シジミ汁や煮つけ等、何から何まで
魚だらけの料理教室です!
びわ湖の魚は、産卵時期や成長度合いなど、
その時期にあわせた調理をすることで、美味しくなります。
今日獲れた魚だけでこんなにレパートリーがあるとは驚きです!
出来上がった料理がこちら!
メニュー
・イサザの煮付け ・ニゴイの天ぷら ・氷魚の釜揚げ
・ブラックバスの天ぷら ・ワカサギの塩焼き
・しじみの味噌汁 ・湖魚のあら汁
まさに
湖魚のフルコース!
昼食交流会の後、
勉強会~びわ湖の漁師に聞く、湖と森のつながり~を始めました!
三枝さんが自作のパワーポイントで、
びわ湖のこと、漁師(湖魚)のことなどを教えてくださいました。
森の恵みが行き着く先、びわ湖では、昔と比べて様々な変化がありました。魚の種類、外来魚の多さ、、、あげだすときりがないですが、大きなポイントになったのは以下の3点です。
①昭和47年にスタートした国家プロジェクト
「琵琶湖総合開発」
びわ湖の周りをダムのように囲み、工業用水等を確保・洪水防止といったことが目的に開発が進みました。
しかし、その犠牲になったのが
湖岸のヨシ帯や、コンクリートの材料に使われた
大津湖底の砂。
ヨシ帯が無くなったことで、フナやホンモロコの生息地が減り、数が減少したとされています。今は「魚のゆりかご水田プロジェクト」といって、水田で稚魚が育つようにして、少しずつ緩和しているとのこと。
また、湖底の砂が無くなったことと昭和30年代にPCPという農薬が散布され、貝を大量に殺してしまった事件などにより、瀬田シジミの漁獲量が10分の1に激減したとのこと。
「びわ湖の生き物は、環境に合わせて生活を変えることはできません。自分たちの数を減らすことで環境に順応するんです」と答える三枝さん。今まで人々がやってきた事は魚にとって取り返しのつかないことだったんだと、身に染みる思いでした。
②昭和49年ころからあらわれはじめた
「外来魚」
平成27年春の時点で
琵琶湖にいる外来魚は1240トン。
一年間のびわ湖の漁獲量が1141トン。
何と外来魚の数が年間の漁獲量を上回っています!外来魚はびわ湖の魚を餌にしているので、このままでは魚が減る一方です。
生態系を守るために漁師が外来魚を獲ることも始めていて、平成10年頃から本格的な駆除が始まっています。年間300トンを基本に毎年駆除を行っていますが、親が残るため、生息数は少しずつしか減らないそうです。
その一方、
外来魚は魚粉として肥料化し、再利用されています。外来魚は高タンパクのため栄養素の高い魚粉が出来るそうです。中村さんが
「悪い魚ではないが、びわ湖にいると他の魚にとって都合が悪いだけ。食べてもおいしいし、しっかりと社会で役立ってるんです」と話されました。
③
「魚を食べなくなった滋賀県民」
平成20年ごろから滋賀県民は魚を食べずに肉を食べることが多くなりました。これまで滋賀県民は全国平均より魚を多く食べていたそうですが、今は極端に減ってしまったとのこと。
魚を食べる量が減れば、魚屋が仕入れなくなって、漁師の収入も減ってくる。
その中で漁師を続けられなくなる問題も起きてきてるそうです。
「現在の漁師人数は687人ですが、50年前は約3000人いました。このままいくと漁師という仕事はなくなっていくことすら考えられるんです。」と、話される三枝さん。これから先とは言わず、
もう目の前に迫ってきている問題と思いました。
また、滋賀県の漁師業界は
高齢化が進んでいて、60~80代が多く、
後継者が育たないことも問題になっているそうです。
最後に三枝さんは、
「漁業は人々が「生き物を知る」ということができる意味もある。自然の中、自分の身近にこんな生き物がいるのかということを知ること、人々が生き物とふれる機会をつくる大切さを伝えられる仕事である。
滋賀県はびわ湖という生き物の恵みが行き着く先がある。山や川を大切にすることが、びわ湖を大切にすることにつながっていく。そのために誰でも出来ることは、ハイキングなどで山に入って、川に遊びに行って、びわ湖の魚を食べること。そうやって自然に興味をもって日常に取り入れるだけでできることはある。」
と、話してくださいました。
今回の勉強会を通じて、
森から川へ、川から湖へと、命がつながっているんだと学ぶことができました。
これから先もこういった勉強会を開いていき、皆さんに少しでも森や自然にふれる機会をつくれるよう、頑張っていきたいと思います。
以上、報告は三上でした。
~最後までお読みいただきありがとうございました~
これからも「たかしまの森へ行こう!」では様々な企画を考えています。
来年度からも乞うご期待ください!